2022年5月16日
【エコキュートは井戸水を利用できるの?】井戸水が利用できるエコキュートについて解説

電気でお湯を作るため、通常のガス給湯器と比べて光熱費が安くなることが魅力のエコキュートですが、通常は水道水を利用し、井戸水は利用することが出来ません。
目で見る限り、井戸水と水道水の違いは分かりづらいですが、実は水に含まれている成分に大きな違いがあります。
というのも、井戸水などの地下水にはカルシウムが多く含まれています。
以下では、井戸水がなぜエコキュートでは使えないのか?
また、なんとか井戸水をエコキュートで使うことができるようにする対処法を合わせて解説していきます。
【目次】
エコキュートで井戸水が使えない理由
人間にとっては、骨を丈夫にするために必要なカルシウムですが、エコキュートにとってカルシウムは故障の原因になります。
その理由として、エコキュート内部にある熱交換器において、水の中にあるカルシウムがタンクや配管内で固体化してしまうからです。
井戸水を利用し続けることで、この固体化したカルシウムが熱交換器内部に貯まってしまい、目詰まりが発生し故障へと繋がります。
このためエコキュートメーカーは、通常は井戸水の利用を禁止しています。
またエコキュートを購入・設置した際にはメーカー保証があり、故障した場合には3年や5年間は無料で交換できることが多いですが、井戸水を利用した場合には保証をつけることができないケースがほとんどでした。
これは、井戸水を利用した場合でも保証をしてしまうと、メーカーとして多くの故障を保証しなくてはいけなくなり、採算があわなくなることを意味します。
それくらい、井戸水を利用することで故障する場合が多かったのです。
井戸水対応のエコキュートが登場
井戸水利用が難しいエコキュートですが、技術改革により近年は井戸水対応のエコキュートが開発され、一部のメーカーで販売が行われるようになっています。
ただし、井戸水に含まれる成分がエコキュートと相性が悪いことに間違いはありません。
そのため、井戸水を利用している家庭で井戸水対応のエコキュートを設置する際にも、事前に水質検査が必要となります。
検査の結果、水質に問題があり井戸水対応のエコキュートでも対応できる範囲を超えてしまうと判断された場合は、設置を諦めることになります。
具体的な設置までの流れは以下の通りです。
➀エコキュートの設置依頼
まずは、購入・設置したいエコキュートを決めて設置依頼を行います。
この手続きの際に、「水質検査依頼書」を記入をすることになります。
②水質検査を行う
メーカーから送付される「採水キット」を利用して、エコキュートで利用する予定の井戸水を採水し、返送します。
➂水質検査の結果が通知される
販売店などを通して、水質検査の結果が知らされます。検査の判断や項目は開示されていないことが多く、メーカーによって若干基準が異なるようです。
通常水質検査に費用が発生しますが、不適合と判定が出た場合には費用がかからないメーカーもあります。
④エコキュートの設置
検査に合格したら、販売代理店がエコキュートの設置作業を行います。
また、井戸水の利用に関する認定書の発行を依頼し、受け取ります。
⑤利用開始
設置が完了したら、利用開始です。水質検査に合格しているため、優良な水質であることに間違いはないですが、絶対に故障しないわけではありません。
使用に関して違和感や不具合がでたら、すぐに販売代理店に問い合わせましょう。
今まで、井戸水を利用しているためにエコキュートの利用を諦めていたご家庭でも、井戸水対応エコキュートであれば利用できる可能性があるので、確認してみましょう。
参考:https://www.daikinaircon.com/sumai/alldenka/ecocute/tikasui/(ダイキンHP)
井戸水対応のエコキュートを解説
パナソニックやダイキンは現在全てのエコキュートが井戸水に対応しています。
パナソニックでは2011年4月以降に販売を開始したエコキュートであれば、水質検査に合格した場合、井戸水の利用が可能です。
井戸水の利用が認定された場合、井戸水の利用が原因で故障したときでもメーカー保証が3年間つきます。
また水質調査については、検査の結果が合格の場合のみ費用が発生します。
費用はだいたい16,500円(税込)ほどのようです。
ダイキンの場合も、パナソニックと同様のメーカー保証・検査費用となっています。
パナソニック・ダイキンは、水質検査さえ合格すれば、井戸水対応という縛りはなく、性能などを基準にお好みの給湯器を選ぶことが出来ることが他社とは異なっている点です。
日立では、「ナイアガラタフネス」という機種が硬度の高い水道水や井戸水に対応しています。
「ナイアガラタフネス」はメーカー保証期間が5年間ついています。
他メーカーと比べても、保証期間が長いことが特徴です。
また長府製作所というメーカーも、一部井戸水対応のエコキュートを販売しています。
以上が、井戸水対応のエコキュートを販売しているエコキュートメーカーになります。
エコキュートに求める性能や保証期間などを考慮し、どのエコキュートを購入するかを判断するようにしましょう。
参考:https://kadenfan.hitachi.co.jp/kyutou/feature/01.html(日立公式サイト)
https://sumai.panasonic.jp/hp/5qa/5_2d.html(Panasonic公式サイト)
井戸水はお金がかからない
エコキュートを設置する上では、水質に問題が生じることが多い井戸水ですが、井戸水のメリットもあります。
それは、価格が安いことです。
井戸水はもともと雨や雪が土壌を通して地下に貯まったものなので、何もせずとも勝手に水が貯まります。
よって、井戸水を利用するために発生する費用は井戸水をくみ上げるポンプの電気代のみです。
例えば、一般的な家庭の利用水量である25トン/1か月を利用したとします。水道を利用した場合、月額約3,000円。
年間で約36,000円がかかります。
一方で井戸水を利用した場合は、最新式の400wポンプで電気代は、年間約10,000円です。
年間26,000円の差が発生し、10年間では26万円もの差になります。
つまり、井戸水を利用した方が光熱費は年間でかなり割安となることがわかります。
エコキュートはお風呂やシャワーなどほぼ毎日使うものなので、利用する水の料金が安いことは、家計の支出的にも助かることになります。
また家庭や地域によっては、過去に井戸水を利用していたが現在は水道も通っているため、水道水と井戸水どちらも使える家庭もあります。
このような家庭では、井戸水が安いことを利用して、飲み水としては水道水を利用、他のエ生活用水(エコキュート利用のための水含む)は井戸水を利用している場合もあるようです。
井戸水対応エコキュートを利用する際の注意点
井戸水を利用している家庭で、井戸水対応のエコキュートを実際に利用する際の注意点を解説します。
井戸水用エコキュートには水質検査が必要
1点目は、今までにも記載した通り、水質検査が必要になることです。
導入をしたくても水質検査で不適合と判断されればエコキュートを設置することは不可能です。
また水道水対応のエコキュートでは水質検査などの検査がないことと比べても、設置までに時間・手間がかかるということも、注意点として抑えておきましょう。
井戸水用エコキュートは価格が高い
2点目は、通常の水道水を利用するエコキュートと比較すると価格が高いことです。
パナソニックやダイキンは、全ての機種が井戸水対応となっているため、価格の違いはありません。
しかし、日立の井戸水対応エコキュートである「ナイアガラタフネス」は水道水対応のエコキュートと比較して、本体価格が10万円ほど高いです。
水道水を利用するよりも井戸水を利用した方がランニングコストは抑えられますが、導入コストが多くかかる場合がありますので、導入コストとランニングコストを見比べると井戸水対応エコキュートの方が総合的に多くコストがかかる場合もあります。
井戸水用エコキュートは水圧・流量が減少することも
3点目は、井戸が従来からある圧力スイッチ式の場合、エコキュートを設置したあとに水圧が弱くなる・流量が少なくなることがあります。
流量や圧力変化に対応する必要があるため、出力を調整できるインバータータイプのポンプを使うことが推奨されています。
実際にメーカーのホームページにも、インバータータイプのポンプ使用を推奨することが記載されています。
ポンプの取り換えを行う場合、十万円ほどの費用が発生するため、家庭の井戸が従来からの圧力スイッチ式のポンプを利用している場合は、注意が必要です。
井戸水用エコキュートは砂こし機が必要
4点目は、井戸水対応型エコキュート設置に当たり、砂こし機の装着が必要になることです。
井戸水からエコキュートに揚水する際に、地中の砂が混じってしまいエコキュートが故障することがあります。
この砂を事前に取り除くための機器として砂こし器の装着が必須になります。
利用する井戸水によってどれほどの砂が取れるかは全く異なります。
1週間程度で目視できる程度に砂こし器に砂が貯まる場合もあれば、1年ほど経過してもほとんどたまらない場合もあります。
砂こし器の本体価格は約2万円です。
定期的にフィルターのメンテナンスが必要になるため、メンテナンスの手間も発生します。
井戸水型対応エコキュートは上記のように注意点も多いため、設置後に予定していなかった費用や労力が発生することを避けるためにも、設置前に注意点を確認しておくことが望ましいでしょう。
日本の水道普及率は98%
今まで井戸水対応型エコキュートの解説を行ってきましたが、実際にはどの程度の家庭が現在井戸水を利用して生活しているのでしょうか。
今から約130年前の1890年頃、横浜市に日本で初めて水道が建設されました。
当時日本は海外との交易を開始した時期でしたが、国内に水系感染症が持ち込まれてしまい、特に開港都市で水系感染症が大流行しました。
このことで国は水道を建設する必要に負われ、水道の普及に力を入れました。
それ以降、国内では水道の建設が進められ、1950年には水道普及率は約25%・1970年には約85%・1990年には約90%と順調に上昇し、2020年には国内での水道普及率は約98%になっています。
国外に目を向けると、水道普及率は低い国も多く存在しています。
2020年のデータによると、水道普及率はタイで約82%・フィリピンで約53%・ベトナムで約22%・ミャンマーで約7%となっています。
また、国内の地域別で見ると東京・大阪は普及率が100%であるにもかかわらず、地方は普及率が低く、熊本では約88%・秋田では約91%・大分で約92%となっています。
水道を引き込む工事は事前に自治体への書類の提出や申請が必要なことに加えて、約50万円費用がかかるため、手間と費用面の問題から水道の設置ができていない住宅もあります。
また地方では自然に恵まれた地域も多く、地下水をくみ上げた飲用井戸を利用していて、味も美味しく成分上の問題も発生していないため、そもそも水道を建設するメリットがないとされている地域もあります。
このような地域ではインフラを整備しても利用されずに採算が取れない可能性が高いため、意図的に導入を見送っているケースもあります。
こういった事情から、井戸水対応型エコキュートは、主に地方で需要が高いです。
またかつては井戸水を利用していて最近水道が通ったため、水道水と井戸水を併用している地域も地方では多いようです。
まとめ
以上が、井戸水対応のエコキュートについての解説です。
エコキュートは電気代を抑えつつ、環境にも考慮した現在注目の機器となっており、現在普及台数は700万台を突破しました。
便利なエコキュートをどの家庭でも利用できるようにするため、各メーカーは技術改革を行い、今では井戸水対応のエコキュートが多く開発されています。
ただし、水質検査が必要で設置が困難な井戸水もあること、初期費用が水道水対応のエコキュートと比較して高いなどの井戸水対応型エコキュートを導入するにあたって、把握しておきたい注意点も多くあります。
井戸水対応型エコキュートを検討する家庭は地方に家を持つ家庭が多いと思いますが、設置前に注意点を確認し、また近い将来水道が設置される予定がないかなどを確認しましょう。
どのような対応が必要になりうるのかを把握したうえで設置を行うことで、将来の対応もスムーズにできるようになります。エコキュートを用いて、お得でエコな生活を送りましょう。