2022年11月12日
【交換する?蓄電池を導入する?】パワコンの寿命がきた時の選択肢

住宅用の太陽光発電システムを導入するご家庭は、近年大きく増加しています。
電気の自家消費ができたり売電収入を得られたりと、さまざまなメリットがあることはご存じの方も多いでしょう。
しかし、太陽光発電システムは一度導入したからといって、ずっと変わらず使用し続けられるわけではありません。
この記事では、太陽光発電の設備で故障のリスクが高いパワコンの基礎知識と、パワコンの寿命がきた時の選択肢として「ハイブリッド蓄電池」を設置するメリット・注意点などについて解説します。
太陽光発電を導入済みでパワコンの寿命が近い、かつ新たに蓄電池の導入を検討している方は、ぜひご覧ください。
太陽光発電に必要な設備
太陽光発電に必要な設備は、大きく下記のとおりです。
- 太陽電池モジュール(太陽光パネル)
- 架台
- 接続箱
- パワーコンディショナ
- 売電メーター
一般的に、太陽光発電システムは導入から10年ほど経過すると、何らかの不具合が起きるといわれています。
なかでも不具合が起きやすい設備が「パワーコンディショナ(パワコン)」です。
故障した際には交換が必要になりますが、交換以外に「蓄電池を設置する」という方法も考えられます。
「ハイブリッド蓄電池」は、太陽光発電と蓄電池を効率良く併用でき、近年問い合わせが増加している設備の一つです。
太陽光発電設備の中で直接発電に関わる重要な機器は、太陽電池モジュール(太陽光パネル)とパワーコンディショナの2つです。
太陽光パネルの耐用年数は30〜50年程といわれており、普及から時が経過するにつれて対応年数も伸びてきています。
一方で、パワーコンディショナは設備の中でも故障リスクが高く、パワコンの寿命によって太陽光発電システムに何らかの不具合が発生することが多くなっています。
パワーコンディショナ(パワコン)とは
パワコンとは、太陽光で発電した電力を家庭で使えるように変換する設備のことです。
すでに太陽光発電システムを導入しているご家庭であれば、なじみがあるのではないでしょうか。
私たちが普段家庭で使用する電化製品は、電力会社から送られる「交流電力」を使っています。
太陽光で発電する電力は「直流電力」と呼ばれるもので、そのまま家庭で使うことはできません。直流電力から交流電力に変換して、はじめて使用できるのです。
太陽光で発電した直流電力をパワコンへ送り、交流電力に変換してから分電盤に送ります。
この時の変換率は100%ではなく、変換時に電力ロスが発生します。つまり、発電した電力をまるまる使えるわけではないということです。
一般的な太陽光発電用パワコンの変換効率は95%前後といわれており、変換効率が高いパワコンほど、太陽光で発電した電力を効率良く活用できるといえます。
パワコンが故障したら
パワコンが故障すると、太陽光で発電した電力は当然使えなくなります。そうなると、日中の高い電力を買わなくてはいけなくなりますよね。
パワコンの寿命は10〜15年程度が一般的です。太陽光発電協会(JPEA)の公式サイト内でも、設置後10年程度で一度点検をし、必要に応じて部品交換や機器の交換を行うことを推奨しています。
交換費用はどのくらい?
パワコンの交換費用の相場は、1台あたり20万円程度とされています。
実際の費用は容量やメーカーなどによって前後するため、あくまでも目安程度にとどめておくと良いでしょう。
そのような中、近年では、「パワコンを交換するタイミングで蓄電池を導入すれば、交換費用が実質タダになる」という声も聞くようになりました。
これは、蓄電池を太陽光発電用のパワコンとしても利用できるためです。つまり、蓄電池を導入すれば、新しくパワコンを買う必要はなくなります。
蓄電池とは
蓄電池は、蓄電システムを利用する場合の機器のひとつです。充電して電気を貯め、必要な時に電化製品などに電力を供給できる、家庭で使用可能な二次電池・バッテリーのことを指します。
蓄電池に貯めた電気を使用するには、パワコンが必要です。
太陽光で発電した電力や蓄電池に貯めた電力を家庭で使う場合、通常は発電用のパワコン・蓄電用のパワコンがそれぞれ必要です。
太陽光発電と蓄電池をセットで導入するメリットについては、こちらの記事で紹介しています
【太陽光パネルと蓄電池はセットがいい?】太陽光発電システムと蓄電池
蓄電用パワコンの種類
蓄電池に使用するパワコンには、「単機能型」と「ハイブリッド型」の2種類があります。
簡単にいうと、単機能型は蓄電専用の、ハイブリッド型は一台で太陽光発電と蓄電池の両方を動かせる新しいタイプのパワコンです。
ハイブリッド型のパワコンを搭載した蓄電池を「ハイブリッド蓄電池」と呼びます。
発電用のパワコンが寿命で故障した際は、交換だけでなくハイブリッド蓄電池の導入を検討するという手もあります。
ハイブリッド蓄電池の導入メリットと注意点
ハイブリッド蓄電池の導入は、電気の変換ロスを軽減できる、蓄電能力が高いなどのメリットがあります。
一方で、導入にあたっては、単機能型パワコンと異なるために注意したい点もあります。
ハイブリッド蓄電池を導入するメリット
ハイブリッド蓄電池を導入する主なメリットは下記3つです。
- 電気の変換ロスが小さくなる
- 蓄電能力が高くなる
- 目的に合わせて設定できる
電気の変換ロスが小さくなる
発電用・蓄電用パワコンが一台で済むため、単機能型パワコンに比べ蓄電池に貯めた電力を使う時の変換回数が少なく、電力ロスが小さく済みます。
ハイブリッド蓄電池には太陽光で発電した電力をそのまま充電できるため、充電される電気は「直流電力」です。
しかし、家庭で使えるのは「交流電力」です。蓄電池に貯めた電力を使うには、パワコンで交流電力に変換する必要があります。
単機能型の場合は、太陽光で発電した電力を家庭で使うために電力変換が3回行われています。
まず、太陽光で発電した「直流電力」を発電用・蓄電用それぞれのパワコンで変換したのちに、蓄電池に充電されます。
さらに、充電した電力を家庭で使う際にもう一度変換が行われるため、合計3回変換されるわけです。
その点、ハイブリッド蓄電池はパワコンが一台のため、変換は一回で済みます。
太陽光で発電した「直流電力」のまま蓄電池に充電できるため、蓄電池に貯めた電力を使う際の一回の変換だけで済むのです。
変換ロスが減るので、発電した電力を少しでも多く自家消費したいと考える方にとっては大きなメリットとなるといえるでしょう。
蓄電能力が高くなる
ハイブリッド蓄電池があれば、災害時に万が一停電してしまった場合に、「電気を使う」「電気を貯める」を同時に行うことができます。
つまり、太陽光パネルで発電した電力を家庭で使いながら、蓄電池に充電することができるというわけです。
これは、発電用のパワコンと蓄電用のパワコンの「自立運転出力」が大きく異なることで発生するメリットです。
災害などによる停電時でも、太陽光で発電した電力を使える機能を「自立運転機能」といいます。
「自立運転出力」とは、自立運転機能が作用するときの出力のことです。
停電した場合は発電用のパワコンから自立運転で電力を取り出すこととなりますが、その出力は、どのメーカーのパワコンであっても1.5kWと定められています。
例えば太陽光パネルで発電した電力のうち1kWの電力を使用していたとしたら、蓄電池に充電できるのは残りの0.5kWとなります。
この電力では、蓄電池を十分に充電するには、少し時間がかかってしまうでしょう。
それに比べ、ハイブリッド蓄電池の自立運転出力は4〜6kWほどです。そのため、電力を使いながら貯めることが可能なのです。
近年、災害時の停電は長期間になることもあります。電力を使いながら貯めることができれば、長期間の停電時も安心感が増すでしょう。
目的に合わせて設定できる
ご家庭それぞれの目的やニーズに合わせて使用環境を設定できる点もメリットとして挙げられます。
例えば災害に備えて蓄電を重視したい場合は、蓄電池の残量を多めに設定できます。自家発電で電気を買う量を減らしたい場合は、蓄電よりも自家消費を優先するように設定が可能です。
代表的な例は以上の2つですが、他にも、蓄電の上限を設定したり、電力を利用する優先順位を設定したりもできる場合があります。
設定できる内容は機種によって異なるため、利用目的が明確になっている場合は、蓄電池の機能面の詳細もチェックしておくと良いでしょう。
ハイブリッド蓄電池を導入する場合の注意点
導入の際に注意したい点は下記のとおりです。
- 単機能型パワコンに比べて導入コストがかかる
- 導入時に太陽光発電システムとの相性チェックが必要
- 太陽光パネルのメーカー保証がなくなる
- 蓄電池の選択肢が狭まる
ハイブリッド蓄電池は、単機能型パワコンと比べると導入コストが高くなる傾向があります。
そのほか、普通に蓄電池を選ぶより選択肢が狭まる点にも注意が必要です。
パワコン故障時は蓄電池導入もアリ
パワコンの保証期間や寿命は、一般的に10〜15年程度です。そのため、いずれは修理や交換の費用が発生します。
もし発電用のパワコンの寿命がきた場合は、ハイブリッド蓄電池を導入すれば、パワコンを交換することなく、太陽光パネルと蓄電池両方の稼動が可能になります。
さらに、新しく導入すればまた新たに10〜15年の保証が付くため、安心して使用できますよね。
通常であれば、蓄電池を設置するには蓄電用のパワコンが必要です。発電用と兼用させれば、パワコンは一台で済みます。
太陽光パネルの設置から10年程度経過するご家庭や、蓄電池の導入を検討しており、かつ発電用パワコンの交換を考えているご家庭は、ハイブリッド蓄電池の導入を検討してみてもいいかもしれません。
まとめ
太陽光発電システム設備の一つであるパワコンの基礎知識と、故障した際の提案として蓄電池を設置するメリット・注意点を解説しました。
パワコンの寿命がきた場合は、交換だけでなくハイブリッド蓄電池の導入という選択肢もあります。
太陽光発電をすでに導入済みで新たに蓄電池を導入しようと考えているご家庭は、パワコンの寿命が絶好なタイミングかもしれません。
パワコンの寿命が近く交換を検討している方、かつ家庭用蓄電池の導入に興味のある方は、ぜひ気軽にご相談ください。