2022年10月30日
産業用蓄電池の価格はいくら?メリット・デメリットまとめ|導入費用を抑える方法3つ!

医療福祉施設、工場、ショッピングモールなどに、バックアップ電源として設備されていることも多い産業用蓄電池。
家庭用蓄電池との大きな違いは、その「容量」の大きさです。
蓄電池の価格は、容量によって大きく異なるため、産業用ともなると「導入するのに一体どれくらいの費用がかかるのだろう?」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
今回は、産業用蓄電池の導入を検討している方へ向けて、産業用蓄電池の価格や、導入費用を抑える方法についてお伝えします。
この記事を読むと、産業用蓄電池を導入するメリットやデメリットについても知ることができます。
産業蓄電池とは?
産業用蓄電池は、私たちが住んでいる住宅以外の建物に設置する蓄電システムです。
2011年に起きた東日本大震災による大規模停電をきっかけに、多くの企業が産業蓄電池の導入を進めてきました。
人の命に関わる医療電気装置も多い病院では、災害などによって停電が発生すると、重要な電子機械が使えないため、深刻な状況に陥りかねません。
災害による停電は、復旧までにおよそ3日間かかると言われています。
産業蓄電池は、その間の電力を確保するためのバックアップ電源として、病院、工場、福祉施設などをはじめ、オフィスビル、ショッピングモールやコンビニなどへも設置されるようになりました。
また日本では、2030年までに新築建築物の年間の一次エネルギー量をゼロにすることを目的とした「ZEB」の実現を掲げており、電力の自家消費を目的とした産業用蓄電池システムの導入が進められています。
産業用蓄電池を設置する際にかかる費用
産業用蓄電池の価格は、1kWhあたり約15万円〜20万円程度です。
家庭用蓄電池と比べると、1kWあたり約1.5倍程度高い相場となっています。
蓄電池の導入する際にかかる3つの費用は、次の通りです。
- 本体価格
- 設置工事費
- 配線工事費
産業用蓄電池の本体価格は、使われている電池の種類によって変わります。
電池の種類と価格を、次の表にまとめました。
産業用蓄電池の種類と価格 | |
リチウムイオン蓄電池 | 約20万/kWh |
ニッケル水素蓄電池 | 約10万/kWh |
鉛蓄電池 | 約5万/kWh |
NAS蓄電池 | 約4万/kWh |
主に産業用に使われているのは、リチウムイオン蓄電池やNAS蓄電池です。
どちらの蓄電池も大容量・高出力・長寿命が特長ですが、リチウムイオン蓄電池は、NAS蓄電池に比べてコンパクトなサイズが魅力です。
蓄電池の価格相場は、メーカーや容量によって異なりますが、販売店によって大きな差はあり出ません。
価格の差が大きく出るのは、設置工事費と配線工事費です。
特に、蓄電池の設置場所を屋外か屋内どちらにするのかによって価格に差が出ます。
産業用蓄電池を導入する際は、複数の販売店から相見積もりを取り、工事内容や価格の比較を行うとよいでしょう。
産業用蓄電池の価格の推移
経済産業省による産業用蓄電池の価格の推移を、次の表にまとめました。
2015年 | 2019年 | |
システム全体 | 35.5万円/kWh | 19.5万円/kWh |
電池部分 | 21.0万円/kWh | 10.2万円/kWh |
表を見ていただくと分かるように、産業用蓄電池の価格相場は下降傾向にあります。
2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、自国のエネルギー自給率を高め、脱炭素化を進める取り組みの一環として、蓄電池の導入支援を進めている状況です。
その一方で、産業用蓄電池に使われているリチウムイオン蓄電池は、現在急速に普及が進んでいる電気自動車にも使われています。
蓄電池の需要が一気に伸びたため、産業用蓄電池の価格が今後さらに安くなることは、あまり期待できないでしょう。
産業用蓄電池の初期費用をなるべく抑えて導入したい方は、今がちょうどいいタイミングと言えます。
産業用蓄電池のメリット
災害時の停電対策や省エネ対策として普及が進む、産業用蓄電池で得られる3つのメリットをまとめました。
- 災害時の電力を確保できる
- 災害時の避難所になる
- 電力を自給自足できる
1点ずつ詳しく解説します。
災害時に電力を確保できる
産業用蓄電池は、容量によって差はありますが、1週間程度の電力を確保できます。
以前から懸念されている南海トラフ地震の発生など、大規模災害による停電への備えが可能となるでしょう。
また、停電時の電力確保は「BCP対策」にも役立ちます。
BCPとは、災害などの緊急事態時に損害を最小限に留め、事業の継続・復旧を目標とした計画です。
東日本大震災で、被災した多くの企業が倒産に追い込まれたことから、大規模災害に備えるBCP対策として、蓄電池を導入する企業が増えました。
災害時に避難場所になる
産業用蓄電池を設置した施設は、災害時の避難場所として利用できる点も大きなメリットでしょう。
蓄電池単体でも約1週間程度の電力を確保できますが、太陽光発電システムと併用すれば、長期間の避難生活にも対応できます。
電力を自給自足できる
太陽光発電システムなどの省エネ設備と連携すれば、施設の規模によっては、電力の自給自足を目指すことも可能です。
産業用蓄電池のデメリット
次に、産業用蓄電池のデメリットを2点解説します。
- 初期費用が大きい
- 経年劣化によるメンテナンスや交換が必要
初期費用が大きい
産業用蓄電池は、容量が大きく本体価格も高額なうえ、設置工事や配線工事も大規模になるため、初期コストの負担はやはり大きくなります。
産業用蓄電池の設置には「ZEB」という補助金制度を利用できます。
蓄電池の導入に使える補助金については、記事の後半で紹介しておりますので、ぜひ併せてご確認ください。
経年劣化によるメンテナンスや交換が必要
産業用蓄電池は、乾電池やスマホのバッテリーと同じように経年劣化します。
約10年も経つと、充電できる容量は70〜80%まで落ちるため、安全を保つためにも定期的な交換が必要です。
産業用蓄電池を選ぶ際のポイント
産業用蓄電池を選ぶ際のポイントを、4つまとめてみました。
- 蓄電容量
- 寿命(サイクル数)
- 定格出力
- メーカー保証、サポート内容
蓄電容量
産業用蓄電池を選ぶ際は、利用する目的に応じた容量を選びましょう。
停電時のバックアップ電源として利用したいのか、電力の自家消費を目的として利用したいかによって、選ぶべき容量の大きさは変わります。
利用目的に必要な電力量よりも少ない容量を選んでしまうと、何度も充電することになり、蓄電池の寿命を早めてしまうため注意が必要です。
必要な電力量よりも余裕をもって、少し大きめの容量を選んでおくと安心でしょう。
寿命(サイクル数)
蓄電池の寿命は「サイクル数」で示され、充電100%から0%まで使い切るまでを1サイクルとして考えます。
産業用蓄電池は高額な導入費用がかかるため、なるべく長く使えるように、サイクル数が大きいものを選びましょう。
電力の自家消費を目的として蓄電池を導入する場合、蓄電池の容量とサイクル数から、おおよその耐用年数を予測することができます。
定格出力
「定格出力」は、蓄電池に蓄えた電力を同時に出力できる最大数値です。
定格出力が低いと、同時に使える機器や設備の数が限られてしまいます。
産業蓄電池を導入する際は、使用したい機器や設備の電力に応じた定格出力を選ぶようにしましょう。
メーカー保証、サポート内容
蓄電池を購入すると、10年〜15年程度のメーカー保証がついてきます。
販売店が独自に用意した保証やアフターサポートなどもありますので、なるべく手厚い内容のものを選ぶと安心でしょう。
産業用蓄電池の設置費用を抑える方法
約10年前と比べても、設置コストが下がりつつある産業蓄電池ですが、さらに費用を抑えるための3つ方法をお伝えします。
- 太陽光発電システムをセットで使う
- 補助金の活用
- ポータブル電源と併用
太陽光発電システムとセットで使う
太陽光発電システムをセットで使うことで、ピークシフトが可能になります。
ピークシフトは、電気を使わない昼間の時間帯に太陽光発電で発電した電気を蓄電池に貯め、電気を多く使う夕方や夜間に貯めた電気を使う方法です。
ピークシフトによって自家発電した電気を使用すれば、電力会社からの買電量が抑えられ、電気代の節約が可能になります。
また、太陽光発電と同時設置することで、別々に設置する場合よりも設置工事費用と配線工事費用を抑えることも可能です。
補助金の活用
産業用蓄電池の購入する際は、国や各自治体が定めた補助金制度の利用が可能です。
ここでは、蓄電池の導入に使える国の補助金の中から一例を紹介します。
建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業 | 設備のZEB化、省CO2化に資する高効率設備等の導入を支援。
経済産業省・国土交通省・厚生労働連帯事業。 |
地域レジリエンス、脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業 | 災害、停電時に公共施設へエネルギー供給が可能な再生可能エネルギー設備等への導入を支援。 |
PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 | 再エネ導入、価格低減促進と調整力確保等により、地域の再エネ主力化とレジリエンス強化を図る。
一部総務省・農水省・経産省連帯事業。 |
補助を受けられる金額や適応される条件は、各省庁や自治体によって異なるため、詳細な内容については、各省庁や自治体のホームページなどをご確認くださいね。
蓄電池に関する補助金は、あらかじめ期限や予算が決定している場合が多いので、産業用蓄電池を導入する際は早めの確認が大切になります。
ポータブル蓄電池と併用
産業用蓄電池などの定置型蓄電システムは、設置工事や配線工事が必須となるため、初期費用が高額になりがちです。
購入しやすい価格帯のポータブル電源と併用すれば、初期費用を抑えることが可能となるでしょう。
ポータブル電源は、名前の通りどこにでも持ち運びできるため、災害時に車中泊をする際やキャンプなどのレジャーでも活用できるメリットがあります。
容量のラインナップが豊富で、デザイン性に優れた製品も多く、国内外問わずさまざまなメーカーから販売されています。
まとめ
今回は、産業蓄電池の価格やメリット・デメリット、導入費用を抑える方法についてお伝えしました。
以前は非常に高額な設置費用がかかっていた産業蓄電池ですが、価格の推移は年々下降傾向にあります。
現在は、国や自治体の補助金制度なども充実しているため、産業用蓄電池を導入するベストタイミングと言えるでしょう。
また産業用蓄電池は、太陽光発電システムと併用することで、設置後の節約効果を得られやすいです。
産業用蓄電池の導入する際は、ぜひ太陽光発電システムとの同時設置もあわせて検討してみてくださいね。