2022年11月22日
蓄電池の容量の選び方は?蓄電容量を選ぶ3つの方法を分かりやすく解説

蓄電容量は蓄電池に溜めておける電力量のことで、容量が多いほど価格は高くなる傾向があります。蓄電容量が適切でないと、蓄電池を効率よく運用することは難しいです。そのため、蓄電池を購入する際は、適切な容量を見極めることが重要になります。
そこで今回は、蓄電池の容量の選び方を分かりやすく解説します。容量を選ぶ3つの方法を解説しますので、悩んでいる方は参考にしてください。
蓄電池の容量とは?
蓄電池の容量は機器に溜めておける電力量のことで、単位はkWh(キロワットアワー)になります。メーカーや機種によって容量は異なりますが、基本的に数値が大きいほど多くの電力を蓄えることができますが、価格も高額になりやすいです。
また、蓄電池の容量には、蓄電池全体の蓄電容量を指す定格蓄電容量と、実際に使用できる電力量を指す初期実効容量の2種類があります。
例えば、京セラのEnerezza(エネレッツァ)は定格蓄電容量が5.0kWh、初期実効容量が4.2kWhとなっています。実際に使用できる電力量は初期実効容量の4.2kWhのため、使用したい電化製品と使用したい時間を求めるときは、4.2kWhで計算しましょう。
蓄電池によっては定格蓄電容量しか公表されていないことがあるので、不明なときは実際に使用できる電力量は定格蓄電容量よりも1割程度少ないと覚えておくと良いです。
蓄電池の容量の選び方
蓄電池の容量で迷ったら、次のいずれかの方法で選びましょう。
- 使用したい家電製品の種類や時間から選ぶ
- 太陽光発電システムの発電量から選ぶ
- 蓄電池の使用用途から選ぶ
上記の選び方を順番に解説します。
使用したい家電製品の種類や時間から選ぶ
蓄電池を購入する目的が停電対策なら、停電時に使用したい家電製品の種類や時間から、必要な蓄電容量を決めましょう。
容量の単位のkWhは1時間あたりの消費電力量を指しており、次の計算式で求めます。
- kW(消費電力量)×1h(使用時間)=kWh(1時間あたりの消費電力)
例えば、消費電力量が40Wの冷蔵庫を1時間使用した場合の消費電力は、0.04kWです。初期実効容量が4.2kWhの蓄電池だと、約105時間連続して使用できます。
つまり、使用したい電化製品の合計消費電力量と使用したい時間から、適切な蓄電容量を算出できます。次の表は、主な電化製品の消費電力をまとめたものです。
電化製品 | 消費電力 |
---|---|
デスクトップパソコン | 150W~300W |
ノートパソコン | 50W~120W |
液晶テレビ | 200W |
携帯電話の充電 | 15W |
冷蔵庫 | 150W~500W |
エアコン | 45W~2000W |
照明(LED) | 4W~10W |
照明(蛍光灯) | 20W~24W |
実際の消費電力は使用している電化製品や使い方によって異なりますが、必要な蓄電容量を求めるときの参考にしてください。
例えば、照明、エアコン、冷蔵庫、ノートパソコンの1時間あたりの消費電力量を620Wとした場合、4.2kWhの蓄電池では6時間ほど動かすことができます。
停電時に使用したい家電製品と、使用したい時間をあらかじめ決めて、適切な蓄電容量を求めてみましょう。
太陽光発電システムの発電量から選ぶ
太陽光発電システムの余剰電力を蓄えるために蓄電池を購入するなら、太陽光発電システムの発電量や余剰電力量から容量を決める方法もあります。
太陽光発電システムは昼間に発電した電力を自家消費しつつ、余った電力を電力会社に売電するか、蓄電池に蓄えることができます。蓄えた電力は夜間に使用するので、1日の買電量を減らせて光熱費の節約が期待できます。
ただし、太陽光発電システムの発電量に対して、蓄電容量が小さすぎたり、大きすぎたりすると、効率よく電力を蓄えて節約に繋げることは難しいです。
1kWの太陽光発電システムに対して、1日平均発電力量は3.0kWh程度と言われています。仮に、5kWの太陽光発電システムを設置しているなら、1日に約15kWh程度を発電できます。
資源エネルギー庁の発表によると昼間の家庭での消費電力量は3kWh程度のため、余剰電力は12kWh程度です。蓄電容量4.2kWhの蓄電池を使用していれば、残りの7.8kWhを電力会社に売電する計算になります。
実際は、天候や季節、ライフスタイル、家族の人数によって発電量や消費電力量が異なるため、上記の計算通りになるとは限りませんが、余剰電力に対して蓄電容量が少ない蓄電池では、多くの電力を売電することになります。
FIT期間(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)なら売電価格も高額ですが、10年を過ぎると売電価格は大幅に減少してしまい、売電よりも自家消費をしたほうがお得です。
つまり、将来を見据える、あるいはFIT期間が終わっているなら余剰電力を全て蓄えることができる大型の蓄電池を購入した方が良いと言えます。
蓄電池の蓄電容量は5kWh前後が主流でしたが、最近は7kWh~10kWh以上の製品も珍しくありません。太陽光発電システムの余剰電力を自家消費に回したいと考えている方は、発電量や余剰電力量から、適切な容量を求めましょう。
蓄電池の使用用途
蓄電池は使用用途で蓄電容量を決める方法もあります。例えば、太陽光発電システムと併用を考えている方は、発電量や余剰電力量などから蓄電容量を決めて、適切な容量を選びましょう。
エコキュートを購入している方は、深夜の電気料金が安くなるプランに入っています。電気料金が安い時間帯にエコキュートを稼働させて光熱費を抑えることができますが、日中の電気料金が高くなる傾向があります。
蓄電池があれば、深夜に電力を購入し、日中の消費電力を抑えることができます。そのため、電気料金が高くなる日中の消費電力を抑えるために蓄電池を購入するなら、消費電力を賄えるだけの容量が必要です。
停電時に備えたい場合は、停電時でも使用したい家電製品の合計消費電力と停電の時間から必要な量を蓄電できる機器を選びましょう。
上記のように、蓄電池をどのような目的で使用するか先に決めておくと、おのずと必要な蓄電容量が分かります。
蓄電池は容量以外にも選ぶポイントがある
蓄電池は蓄電容量以外にも、次のようなポイントがあり、選ぶ際に比較することが重要です。
- 蓄電池の種類
- 停電時の電気を供給できる範囲
上記のポイントを順番に解説します。
蓄電池の種類
蓄電池は大きく分けて、独立型、連係型、EV対応型の3種類に分かれています。
独立型は電力会社から電力を購入して、蓄電できる種類です。蓄えられた電力はブレーカーやコンセントに差し込んで、非常時に給電できます。太陽光発電システムとの連携はできませんが、昼間の消費電力量を減らし、緊急時の予備電源として役立ちます。
連係型は電力会社から電力を購入するだけでなく、太陽光発電システムで発電した電力も蓄えることが可能です。蓄えた電力は分電盤を通して、住宅全体に給電されるので、独立型のように自分で作業をする必要がありません。
連係型は電力を変換するパワーコンディショナーが2台必要な単機能型と、1台にまとめてあるハイブリッド型の2種類があります。これから太陽光発電システムと蓄電池を設置するなら、ハイブリッド型がおすすめです。
EV対応型は、主に電気自動車への充電と放電が可能な蓄電池のことを指します。機種によっては電力会社や太陽光発電の電力を蓄えることも可能です。他の種類に比べて蓄電容量が大きく、大型の太陽光発電システムと併用すれば電力の自給自足が実現できます。
蓄電池を購入する際は、自分の考えている使い方が可能な種類の蓄電池を選ぶようにしましょう。
停電時に電力を供給できる範囲
蓄電池のタイプによって、停電時に給電できる範囲が異なります。
特定負荷型の蓄電池は、停電時に事前に設定した部屋(コンセント)にのみ給電できます。特定の部屋の家電製品しか動かせませんが、消費電力量が減るため停電期間が長引いても対応しやすくなっています。
全負荷型の蓄電池は、停電時にすべての部屋に給電できます。住宅全体に給電するため、停電時でも普段通りに近い生活を送ることが可能ですが、特定負荷型に比べて停電時の消費電力量の負担が大きくなります。
特定負荷型と全負荷型は購入後に変更はできません。停電時に、どのように過ごしたいのか考えて、どちらのタイプを選ぶか決めておきましょう。
蓄電池と太陽光発電システムは併用すべき?
蓄電池と太陽光発電システムは可能であれば併用すべきです。なぜなら、蓄電池と太陽光発電システムは互いのデメリットを補完できます。
蓄電池は電力会社から電力を購入して蓄えることもできますが、電力会社から電力を購入すると電気料金が掛かります。エコキュートを導入している家庭なら電力の安い時間帯に購入して、電力の高い時間帯に消費できますが、通常の電力プランでは難しいです。
太陽光発電システムがあれば、日中に蓄えた余剰電力を使用して、夜間の消費電力量を抑えることができるため、1日の買電量を減らすことができます。つまり、蓄電池のデメリットを補うことができます。
太陽光発電システムも単体で運用可能で、余剰電力を電力会社に売電すれば、光熱費の節約に繋がります。しかし、売電価格は固定買取期間(FIT期間)の10年を過ぎると大幅に下落します。
2022年度の1kWhあたりの売電価格は17円です。仮に、2022年度に太陽光発電システムを導入した方は、2031年度までは1kWあたり17円で売れますが、2032年度以降は売電価格が8円~11円以下に下がる可能性があります。
次の表は、九州電力エリアで卒FIT後の余剰電力買取サービスの売電価格を簡単にまとめたものです。
会社 | 1kWhあたりの売電価格 |
---|---|
九州電力 | 7円 |
一条工務店 | 11円 |
idemitsuでんき | 7.5円~9.5円 |
エバーグリーン・リテイリング | 7円~9.3円 |
eco電力 | 8円~10円 |
ENEOS | 8円 |
住友林業 | 11円 |
銚子電力 | 7円 |
トラストバンク | 寄付・お礼品 |
ミサワホーム | 10円 |
みやまんでんき | 7.7円~8.03円 |
上記の価格は2022年11月時点のもので、将来的に下がる可能性は十分に考えられます。
つまり、太陽光発電システムで発電した電力は、卒FIT後は自家消費に回したほうが、消費電力が節約でき光熱費を抑えられます。そのため、蓄電池は太陽光発電システムのデメリットを補います。
既に太陽光発電システムを設置していても、蓄電池を後から取り付けることは可能です。反対に、蓄電池を設置した後に、太陽光発電システムを設置することもできます。
ただし、太陽光発電システムと蓄電池の種類によっては、対応していない、取り付けることで不具合が起きるなどの可能性があります。そのため、太陽光発電システムと蓄電池を併用したい方は、「エコ未来応援隊」のように、両方を扱っている業者に相談してみましょう。
蓄電池の容量は後から増やせる?
結論から申し上げますと、蓄電池の容量は機種にもよりますが後から増やすことが可能です。
例えば、京セラが販売しているEnerezza(エネレッツァ)は初回設置後2年以内であれば蓄電池ユニットの増設が可能です。蓄電容量5kWhを10kWh、あるいは15kWhに後から増やすことができるので、家族の人数が増えた、ライフスタイルが変化したなどの状況に対応できます。
京セラ以外にも、シャープやダイヤゼブラ電機(旧:田淵電機)、Huaweiなどのメーカーからも設置してから容量を増やすことができる蓄電池が販売されています。蓄電容量で迷ったときは、後から増やすことが可能な蓄電池も選択肢に入れてみましょう。
蓄電池の容量は減るの?
蓄電池は充電と放電を繰り返していくと、充電可能な最大容量が減っていきます。機種によって寿命は異なりますが、大抵の蓄電池が10年~15年以上使用すると、蓄電容量が50%~70%程度に減少する傾向があります。
例えば、蓄電容量が5.0kWhの場合、10年以上使用すると、容量が2.5kWh~3.5kWhに低下する可能性は高いです。
蓄電池を長期間使用していて、蓄電効率が下がってきたなと感じたら、買い替えを検討してみましょう。
電の復旧までの時間は?
停電の復旧までの時間は、停電が起きた原因によって異なります。
例えば、2018年9月に発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」は火力発電所や風力、水力発電が停止したことにより、最大約295万戸が、2日間停電することになりました。
一方、2019年9月に発生した「令和元年房総半島台風」では、鉄塔の破損や、配電設備である電線の断線、電柱の損壊など共に土砂崩れも発生したため、復旧するまでに最長2週間もかかりました。
上記の災害後、経済産業省が発表した資料によると、比較的被害が少ない地域では停電が復旧するまでにおおむね2日かかると判明しています。つまり、停電時に備えて蓄電池を購入したい方は、2日分の家電製品を動かせる程度の容量を選ぶと安心できます。
まとめ
以上が、蓄電池の容量を選ぶ3つの方法の解説になります。容量を選ぶときは、「使用したい家電製品の種類や時間」「太陽光発電システムの発電量」「蓄電池の使用用途」のいずれかから、適切な容量を求めてみましょう。
また、蓄電池は蓄電容量以外に種類や給電範囲など、比較すべきポイントが幾つもあります。そのため、蓄電池選びに迷ったら、エコ未来応援隊にご相談ください。これまでの豊富な経験から、適切な蓄電容量を見極めてご提案させていただきます。